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夜釣の帰りに見た幽霊

夜釣の帰りに見た幽霊

 

俺は夜釣りが好きだ。
友達にも勧めてるんだけど、誰も来てくれないので、一人で出かけることが多い。
夜は危険もあるから、複数人で行った方がいいのだが…
なので、安全で柵のある防波堤など、一人でも大丈夫な場所を選んでる。

夜の釣りは、もっぱら電気浮きの籠釣りでアジを狙う。
たまにシマ鯛とかかかったり、外道でもそっちの方がいいかなってのもあったり(笑)

釣れなくても、暗い水面に浮かんでる電気浮きを、ぼーっと眺めてると、心が穏やかになっていく。
汐のにおいと、波の音と、時折通る船の音…
暗い世界に遠くの工場の灯り…
日頃の喧噪からしばし離れて、静かに穏やかな時間が流れて行くのは、なんだかいいものだ。

それで、その日はちょうど会社の仕事も一段落し、釣りに行こうかと思った。
その前の休みに、餌を買いに家族といっしょに近くの釣具店へ行って、餌と仕掛けを買った。
餌はおきあみの冷凍ブロックで、一人なので1/16サイズで十分。
仕掛けは蛍光スキンと、はげ皮のさびきを少しサイズ違いで購入した。
たまに大物がかかる時もあるけども、だいたいの型は通い慣れてるので、わかってるから…(笑)

それと、置き竿でトリック仕掛けをやる事もある。

これをやると、竿先にケミホタルをつけて当たりを見る訳で、そうなると、遠くに投げて浮いてる電気浮きと、近くの竿先のケミホタルの、目の焦点がが違い過ぎて見辛く、どうしても置き竿がおろそかになる事が多い。
それで、結局投げ一本でやる事がほとんど。

釣りが好きじゃない人もいるだろうから、しかけの話はこれくらいにしておこう(笑)

会社から家に19時半頃到着し、そのまま準備してあった釣り道具一式を持って、車で出発したのが20時頃だった。
そのまま釣り場の港に向かう。

帰宅ラッシュも終わってて、道も空いてるし、だいたい家から1時間ちょっとで現地に到着した。

途中、コンビニで夕飯の弁当や飲み物を購入。
寄り道してても、この時間で到着すれば、他の仕事終わりで来る釣り人もまだ来てない。

これまで釣れた実績のあるポイントに荷物を置いて、ライトを点けて仕掛けの準備に入る。
水汲みバケツは、岸壁下10mが海面だから、小さめのものを用意して持って来ていた。
じゃないとかなり重いから汲み上げるのが大変。

それで、釣りがスタートして、キャンピングチェアに腰掛けて、時々釣れる魚をクーラーにしまいながら、5時間ぐらい釣りを楽しんだ。

けっこう鯵が釣れたので、気持ちも朗らかに帰れる。
餌の周辺に水を撒いて、汚した所は奇麗にして、ゴミなどもみな片付けて帰路についた。

釣りが終わってからの缶コーヒーはなんだかおいしい。
眠気覚ましにもなる。

時計を見たら、深夜2時半頃だった。
夜中はほとんど車も通ってない道なので、3時には帰宅出来るかな?と思い、街灯もまばらな夜の道を急いで、車を走らせていた。

この道は、川に沿った道で、河の蛇行とともに道も蛇行してる。
県をまたいでるので、急に道が荒れたりきれいになったりと、その市町村の懐具合もあってか、ずっと舗装路でもない。

そんな事を注意しながら、少しスピードを上げて走ってた。
川沿い道はバイパスで、良いところは信号が少ないこと。
若干眠くなりながらも、缶コーヒーをまた買って休憩して、再び帰路を急いだ。

40分くらい走った時のことだった。

ふと、先の遠くの道路脇に、人らしき姿があった。

…こんな夜中になんだろう?…

車は次第に近づいて行く。
だんだん人の姿がみえてきた。
やっぱ人だ。
でも、どうもはっきりと見えない感じもする。

さらに近づくと、作業着を着た人の姿だとわかった。

その人は左側の少し高くなった路肩から、道を渡る格好をして、こっちを見てるように見えた。

俺はブレーキを踏んで、車のスピードをゆるめ、その人に近づいていった。

その時、さっきから感じてた違和感に気がついた。

その人を超えた先きに、速度標識がある。
ちょうどその人に隠れるあたりにあるのがわかる。

けれど速度標識が、その人の身体を透けて、俺の車のライトに反射して光ってる…

え?!

何度も見返したが、間違いなくその人は透けていた…

俺は急に背筋がぞくっとして、怖くなった。

人影は、そこに立ったまま道を渡るようにもみえず、でも、もしこの人が人間で、横断するのであれば危険なので、徐行しながら、そのすぐ脇を通りすぎた…

その人は俺のほうを見ていた。
立っていると言うか腰から下がよく見えない。
さらに身体全体が半分透けてる…

ちょっと怖くなって、それを見ないようにすぐ目をそむけた。

通過してからゆっくりと、恐る恐るバックミラーを見ると、誰も後ろにはいなかった。

俺はぎょっとして、一旦ブレーキを踏んでかなり徐行した…
深夜の道に、他の車など前にも後ろにもいない。
静まり返った夜の空気が流れていく。

やっぱり幽霊だった…
考えただけでぞっとした。

そして、すぐ急なカーブにさしかかり、トロトロとそのカーブを曲がりきったその時に、突然真っ白な路面が見えて、俺は、急ブレーキかけ車を停止させた。

そこには一面、発砲スチロールの残骸が、山の様に散らかってて、道路を覆い尽くしてた。

先の方にトラックの運転手いて、ライトを片手で振って、止まれの合図を俺に送ってる。

これにはさらにびっくりした…

運転手はすみませんと頭を下げてる。

大型トラックの荷台から、発泡スチロールが落下して路面に散乱していたのだ。

俺はゆっくりと徐行しながら、反対車線側に出て、現場を通過して行った。

車を走らせながらこの体験をよくよく考えてみた。

もし、幽霊を見てなかったら、俺は多分減速してなかったかも知れない。
そうしたら、この発砲スチロールの山に突進し、とんでもない事故を起こしてたかもしれない…

そんな風に考えると、あの作業着の幽霊に、もしかしたら助けられたのかも…

なんとも不思議な体験だった。




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